いつ見ても、なんにも入っていない金庫

長野県は信州でも特に風景の美しい地域として、全国的に知られています。街中からでも望める美しい山並みや澄んだ空気は、この地を訪れた人にさわやかな印象を与え、明日への活力を分け与えてくれると、何時だったかの校長先生の話の中で出ていたような気がします。
もっとも、生まれも育ちのこの長野県の私にとっては、この地域の美しい自然も「そこにあって当然」というものですし、まだ10代のこの身では他の地域が実際にはどんな環境なのかも実感できておらず、先の校長先生のありがたい話も「ふーん、そうなんだぁ」くらいのものでしかありません。きっと私がもっと年を重ねれば、この地域の美しさや貴重な自然のありがたさが分かるのだろうなと思っています。

さて、このように私は長野県に住んでいますが、実は実家はこの地域有数の旧家というものらしく、毎年の盆暮れにはかなりの数の贈答品が届けられます。中身的には定番の高級ハムセットとか、とても値段が張るお茶詰め合わせなどが多くあり、はっきり言ってこの時期は食べ物ばかりが家の中に増えていく傾向にあります。

ちなみに旧家らしく、うちの奥座敷には金庫があるのですが、前述の通り我が家に来る贈り物は食べ物ばかりなので、あまり役には立っていません。と言うよりも、「いつ見ても、なんにも入っていない金庫」状態になっており、私が子供ころから中身が何か入っていた記憶がないのです。
「これこそ『宝の持ち腐れ』だよねぇ」と、内心思っている私なのでした。